技術開発

              
当面できることをどんどん解析するというやり方と並んで、ゲノム解析研究では技術 開発を重視し、いろいろな小型研究を進めています。これらは、ベクターの開発やin situハイブリット形成法の改良開発など、構造解析と密接なものから、DNAの新しい 分離・分類法、新しい文字配列決定につながる技術の開発研究など多岐にわたってい ます。文部省研究班はその性格と予算の制約から、ブレークスルーを狙う研究に限っ ており、チームとしては新しいアイデアを取り込みながら息長く継続する方針です。 これまでに、ベクター開発やin situハイブリット技術の開発にかなりの進歩が認められました。他方、我国全体としてみると、将来の高速DNA文字配列決定時代に向け てのシステマチックな技術開発のプロジェクトの組織化に欠陥があり、ここに省庁枠 を越えて総合的に取り組む必要を日夜痛感させられています。

技術開発には上記とならんで、モデル生物のゲノム解析プロジェクトが取り上げられ ています。その基準は(1)国際協力を含んでいること (2)新しい技術開発につな がるものであることの2点です。当面、枯草菌ゲノム解析プロジェクト(主にECチー ムとの協力)、分裂酵母ゲノム解析プロジェクト(米国等との協力)、線虫ゲノム解 析プロジェクト(英国との協力)が推進されており、各々文字配列決定、物理的地図 の作成、cDNAの解析において、当初予想した以上の成果を挙げつつあります。モデル生物は、遺伝子数も少なく単純なゲノムなので、その解析を進める中から、ヒトゲノ ム解析が将来出会う問題を先取りして解決する経験を蓄積しつつあります。解析の規 模が拡大するに伴い、緻密な国際協力と協調が欠かせなくなる中で、これらのプロジ ェクトが果たしつつある先導的役割は評価できるものです。

国際的にはこのほかに、プロジェクトとしてマウス、ショウジョウバエ、パン酵母、 大腸菌、シロイヌナズナ、イネなどのゲノム解析があります。このうち、マウスは厚 生省の研究班で、イネは農水省のプロジェクトとして、大腸菌は文部省の総合研究A として、各々サポートを受けています。