不安定なヒト・ゲノムDNAを安定化させるYACクローニング系の開発

京都薬科大学・生命薬学研究所

今本 文男

目標

ヒトDNAのYACクローンの約1%は酵母菌内で不安定であって,ヒトDNAライブラリーの作成 に支障を来している。これを解決するために、

このような技術は,反復配列を多くもつ遺伝病の原因遺伝子のクローニングや研究に特に重要であると考えられています。DNAの指紋判定にも、DNAクローニング過程での変化を避けるために重要であると云われています。

成果

ヒトX染色体のCV(色盲症)遺伝子DNA(130 kbp)は,YACクローンとして不安定であって、 ライブラリー作成が困難でした。調べてみると、酵母菌内ではCV DNAが部分的に欠失していき、段階的に短くなることが分かりました(下図)。RAD52というDNA組換え活性が低下した酵母菌を用いると、CV DNAが安定化しました。今後、さらに別なRADを用い、多くの不 安定ヒトDNAを安定化させる宿主酵母菌を見つけるつもりです。また我々は、短いYAC DNA(10 kbp)を安定に保持する酵母菌を二株見つけました。現在これらの酵母菌が、反復配列を含むゲノムDNAの安定性も増すかどうかを検討中です。

図の解説

CV-YAC DNAが酵母菌内での28日間培養中に低分子化していきます。L,M,Sはそれぞれ140 kbp,115 kbpと90 kbpでした。


参考文献

河野享子,和田守正,加納康正,田辺純子,加藤環奈,五島直樹,今本文男:YACクロー ンの安定化・(1993)      蛋白質・核酸・酵素 増刊「ゲノム解析研究」 38, 607-612