直接観察によるDNAダイナミクスの追跡

名古屋大学工学部応用物理学教室

土井正男

目標

 この研究ではDNAの塩基配列を読み取るために必要な、DNAの分離技術について研究しています。我々は特にDNAの動的な挙動に注目し、

ということを目標としています。

 この研究は、DNAを直接観察できることから、高分子科学の立場からも興味深いもので す。また、動きを知るだけでなく、薬物を添加した際のDNAの構造の変化、DNAと蛋白質の相互作用、DNAと界面の相互作用、といったことも調べることができます。

成果

 実験のためのシステムが完成し、観察したDNA分子の動きを数値化できるようになって います。これを用いて、ゲル中のDNAに電場をかけると周期的な運動をしながら泳動する ことを定量的に示しました。計算機によるモデル計算でも同様の結果が得られています。このことは、近年用いられている非定常電場ゲル電気泳動法によるDNAの分離のメカニズ ムを明らかにするうえで大きな手掛かりとなることが期待されます。

 今後は理論的な考察を進め、新しい分離技術の開発にあたる予定でいます。

図の解説

ゲル中のDNA分子に電場をかけたときの運動の周期性を、時間相関関数で表した。実線 はDNAの速度、波線は形の変化の周期性をそれぞれ表している。この周期が、DNAを分離する際に重要な働きをする。


参考文献

土井正男他:DNA長鎖の分離法、シミュレーションと直接観察によるDNAダイナミクスの追跡・(1993)蛋白質核酸酵素増刊「ゲノム解析研究」38, 533-540