線虫遺伝子の系統的解析−全遺伝子の単離をめざして

国立遺伝学研究所・遺伝情報研究センター

小原雄治

目標

 この研究では、線虫の一種であるC.エレガンスという生物を材料として、

ことがおこなわれます。

 このような研究を通して、生命現象を演じる役者(遺伝子)を全部そろえることをめざします。発生・分化・行動など高次の現象には多くの遺伝子の働きが必要ですが、その台本の全体像を明かにするという新しい研究分野を開くことを目標にしています。線虫は特に、発生学、遺伝学の蓄積があり、非常に適した材料です。また、ヒト遺伝子との相同性も続々と見つかっており、ヒト遺伝子の機能を実験的に調べる系としても役立つと考えられます。

成果

 線虫から mRNA を抽出し、遺伝子ライブラリー( cDNA ライブライブラリーと呼びます)を作りました。ここから未知遺伝子を順番にとりだして、

を系統的に進めています。これまでに、約 1,000 個の遺伝子について調べました。今後 2年以内に、全遺伝子を解析できるよう計画しています。

図の解説

 遺伝子の発現時期の決定。胚発生(受精後約 14 時間で幼虫になる)のいろいろな時期の胚から cDNA (mRNA をDNA に変換したもの)を合成し、短冊型のナイロン膜に一定量 ずつ点点と固定してあります。これに、放射能標識したいろいろな遺伝子をハイブリダイズさせ、X線フィルムに露光すると、黒化度から発現量がわかります。最も黒くなった時期に発現量が最も多いことになります。例えば、 unc-54 遺伝子は胚発生後期に発現することがわかりますし、遺伝子 4-3 は初期に発現することがわかります。


参考文献

小原雄治:線虫C.エレガンスのゲノム解析・(1993) 蛋白質核酸酵素「ゲノム解析研究 」38, 685-695