キャピラリー電気泳動法を用いるゲノムの解析

馬場嘉信

目標

　この研究では、ヒト・ゲノムDNAの30億文字もの情報を高速かつ正確に解読できる新型 自動化装置の開発をめざし、

• 髪の毛のように細長いガラス管（キャピラリー）を利用した電気泳動により、ヒトのDNAを高速で分離する方法を確立
• キャピラリー電気泳動に、レーザーを利用したDNAの情報解読装置を組み込み、ヒトの 遺伝情報を高速に解読する方法を確立
• キャピラリーを100本程度並列させて、同時に大量のヒトDNAサンプルの遺伝情報を解読できる方法を確立

　キャピラリー電気泳動法は、ヒト・ゲノムDNAの情報を解読できるだけでなく、遺伝子 によるがんなどの病気の診断および遺伝子鑑定のための重要な基礎技術であり、これらの分野への応用研究も同時に行なわれます。

　 成果

キャピラリー電気泳動では、キャピラリーの両端に1万ボルト以上の電圧をかけ、DNAのサイズの違いによる泳動速度の差により分離します。高電圧による電気泳動のために、図に示すように、その分離を高速化できます。

　現在までに

• 従来法の10倍の速さで、DNAを分離することに成功
• レーザーによる遺伝情報解析装置を開発
• 多数のキャピラリーを並列化したシステムを設計。装置を開発中

図の解説

キャピラリー電気泳動によるヒトDNAの高速分離。400塩基までのヒトDNAが1塩基のみの大きさの違いにより、わずか40分で分離された。

馬場嘉信, 他：キャピラリー電気泳動法による新しいDNA解析法の開発・(1993) BioIndustry, 10, 39-45

R. Mathies, 他： Capillary Array Electrophoresis, (1992) Nature, 359, 167-169.

神原秀記, 他： Multiple-Sheathflow Capillary Array DNA Analyser, (1993) Nature, 361, 565-566.