巨大 DNA のクローニング系と構造解析法の開発

京都大学理学部

藤澤 久雄

目標

 現在の塩基配列決定法では、1回にせいぜい 500塩基程度しか分析できません。したがって、巨大 DNA の全構造を決めるには 500塩基単位で塩基配列を決定し、それを積み重 ねて全体を構築することになります。

 この研究では、T3 という細菌性ウイルスの試験管内頭部形成系を用いて、巨大 な DNA(40、000塩基)のままで遂次的欠損を導入し、効率よく塩基配列を決定する方法を開発します。このような技術はヒト以外の生物のゲノム構造の解析にも有用な汎用技術であり、関連研究者が取り扱い易いよう改良を重ねています。

成果

 T3 ウイルスでは、 直線状 DNA が一端から他端へと順序よくウイルスの殻内へ詰め込 まれます。詰込まれた DNA は DNA 分解酵素により消化されないので、詰込反応開始後適当な時間に酵素処理すると詰込まれていない部分の DNA は消化され、DNA に遂次的欠損 が導入できます。この系を用い、

 現在、この方法を用いて巨大 DNA の塩基配列を一挙に決定する系を開発しています。

図の解説

I. 遂次的欠損法による塩基配列決定法の模式図.

II, III. T3 頭部形成系を用いて得られるクローンの制限酵素 (Pst I) 消化パターン II とIII を比較すると FFGG I と整列出来ることが分かり、同時に I 断片について遂次的欠損クローンを得る 。


参考文献

橋本主税・藤澤久雄: T3, T7 ファージの複製と遺伝子発現・ (l992)蛋白質核酸酵 素 増刊「分子ウイルス学」37, 2560- 2569.

加藤尚子・椙崎弘幸・高浪満・藤澤久雄: T3ファージを用いた巨大 DNA のクローニ ングと構造解析(1993) 蛋白質核酸酵素 増刊「ゲノム解析研究」 38, 618-625.