新しいゲノムDNAのクローニング法の開発
東京大学応用微生物研究所
大石道夫
目標
2種のDNAを比較して、その構造に再編成、増幅、メチル化などによって不特定領域に
差異がある場合、差異のある部分を選択的にクローニングするために有効な方法を確立します。この方法は、ゲノ厶解析における応用範囲が極めて広いと考えられます。
成果
我々は微小差の構造変化を有するDNAのクローニング法として、ゲル中でのDNAの競合的再会合(IGCR)を用いた方法を開発し、哺乳動物ゲノムのDNAに1コピーしか存在しない微
小な構造変化をクローニングできる方法を確立しました。構造の変化したDNAをゲノムあ
たり1コピー添加し、IGCR法を2回、3回と繰り返すことで約10、000倍に濃縮できることが確認できました。このような技術は医学、生物学の分野において動物ゲノムの動的挙動を研究する上で多くの応用が期待できます。特に、
- 神経細胞(脳)における遺伝子の構造変化
- 老化における遺伝子の構造変化
- 新しい発癌遺伝子、転移遺伝子、抑制遺伝子のクローニング
- 疾患特異的遺伝子のクローニング
等の現在の医学、生物学のブラックボックス解明の有効な手段として用いられ新しい生理現象の探求、新しい生理活性物質の発見ができうる可能性があると考えられます。

参考文献
- Yokota, H. & Oishi, M. Differential cloning of genomic DNA: Cloning of DNA with an altered primary
structure by in-gel competitive reassociation.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6398-6402.
- Yokota, H., Iwasaki, T., Takahashi, M. & Oishi, M. A tissue-specific change in repetitive DNA in rats.
(1989)Proc. Natil. Acad. Sci. USA 86:9233-9237.
- Yokota, H., Takahashi, M., Iwasaki, T. & Oishi, M. Possible alteration of genomic DNA in specific rat
tissue.(1989)Cell Struc. Func. 14:759-767.