枯草菌ゲノムの全塩基配列決定とその解析

奈良先端科学技術大学院大学

小笠原 直毅

目標

 細菌には約4千の遺伝子が存在し、それらが協調的に働いて生物として生育しています。研究技術の発展により、現在その全遺伝子の構造決定が現実的な課題となっています。この研究では日本の 6 研究室と EC 諸国の 10 研究室がそれぞれゲノムの特定領域を受 持ち、年間 50 Kb 以上の配列決定を進め、枯草菌ゲノムの全塩基配列を決定することを 目指しています。

 また、細菌では配列決定により見いだされた新たな遺伝子の機能を実験により解析することが可能です。したがって、決定された配列から新たな遺伝子を見いだし、その機能を推定するゲノム情報学の発展にとっても有効なモデルとなります。そのため、得られた配列は多くの研究者に使いやすい形でデーターベース化することを計画しています。

枯草菌全ゲノム配列決定のための分担領域:

成果

 蛍光シークエンサーを用い る配列決定のプロトコールが確立し、その結果 10 Kb の配列を 1 〜 2 カ月で決定できるようになっています。日本のグループではまず 1995 年までに総計 1000 Kb の配列決定を完成することを目標にしていますが、現在までに分担領 域について、463 Kb の領域のクローニングが終了し、既知のものを含め総計 210.5 Kb の配列が明らかになっています。

 また、既にデーターベースに登録されているものを含め、決定された配列から重複を取り除き、遺伝子等の情報を加えたゲノムデーターベースの作成も情報専門家および大腸菌・酵母の研究者との共同ですすめており、来年度配列決定の本格化とあわせてその運用を開始する予定です。


参考文献

小笠原直毅:枯草菌ゲノムの全塩基配列決定プロジェクト・(1993) 蛋白質核酸酵素増刊 「ゲノム解析研究」38, 669-676