重点領域研究


 ヒト・ゲノム解析計画は生物学がこれまで直面したことのない大量のデータを産み 出します。それに対処できる情報解析技術は普通の計算機が得意とする数値計算処理 ではありません。DNAの文字列に書かれた生物の意味を理解するには、我々が外国 語の文章を理解するように知識の処理が必要なのです。しかしながら、我々はゲノム の言語を理解する辞書ももってないし、文法体系も知りません。ヒト・ゲノム解析計 画が必要とする情報解析技術は、大量のデータの中から生物学の知識を体系化し、知 識を利用する技術なのです。そしてこれは知識処理や並列処理といった計算機科学の 最先端の技術と深く関連しています。重点領域研究「ゲノム情報」は生物科学と計算 機科学の接点に生物情報科学ともいう新しい学問分野を形成し、ヒト・ゲノム解析計 画を推進していくことを目的としています。

 重点領域研究「ゲノム情報」の具体的な活動は、

  1. 生物情報科学の新しい研究の推進

  2. 生物系と計算機系の交流を基盤とした研究者層の拡大

  3. ゲノム研究の現場の支援

を3つの柱としています。(2) のための定期的な公開行事として、夏に講習会を、冬 に国際的なワークショップを開催しています。(3) としては、ゲノム研究のインフラ ストラクチャー作りとして、ヒトゲノム解析センターを中心としたゲノム研究ネット ワーク、「ゲノムネット」の構築と提供を行っています。

 ゲノム情報解析には大きく分けるとデータベースの問題とデータ解釈の問題があり ます。データベースの問題とは、ゲノム解析がもたらす各種マッピングデータと配列 データ、さらに立体構造など関連したデータを、いかに統合したデータベースを構築 するかという問題です。データ解釈の問題とは、ゲノム解析の実験による最終データ である塩基配列に書かれた生物的意味を理解するための、新しい知識情報処理技術を 開発することです。これらの基礎研究と、その成果を実用化した技術による研究支援 を行うため、ヒトゲノム解析センターに「ゲノムデータベース分野」と「DNA情報 解析分野」が設置され、緊密な連携のもとに研究が進められています。