生物ゲノムの情報量

 ヒトの全ゲノムはDNAの塩基数にして約30億あります。一方、最も小さな生物としてφX174というファージ(バクテリアに寄生するウイルス)の全ゲノムは約5000塩基しかありません。ウイルスはもちろん単独では生きていけず、宿主の生命維持機構を利用しています。ウイルスのゲノムは数千から 数10万くらいの大きさで、単独で生きる生物は最低数100万塩基のオーダーのゲノムが必要のようです。例えば大腸菌ゲノムの大きさは470万です。したがって、地球上に存在する普通の生物種のゲノムの大きさは数100万から数10億程度になります。一般に、より高等な生物のほうがゲノムの大きさが大きくなる傾向がありますが、たとえば両生類にはヒトより大きなゲノムをもつものがあり、これはくり返し配列の量などの違いによると思われます。ヒトには10万あると言われる遺伝子の数のほうが、恐らく生物の高等さを示す指標になっていると思われます。

 遺伝子とは、ゲノムの中でタンパク質と機能性RNAのつくり方を定義している部分です。全ゲノムの塩基数に対し遺伝子部分(転写される部分)が占める総塩基数の割合は、例えば大腸菌では90%程度ですが、ヒトでは約5%しかないと見積られています。両生類ではこの割合はさらに低いはずです。ゲノムの中には一見何をしているのか分からないDNA、あるいは何の役にもたっていないと思われるジャンクDNAがたくさんあることになりますが、じつはここにダイナミックなゲノムの過去の歴史が残っているのかもしれません。


参考資料

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