細胞

 これらの情報の流れは、生体内でさまざまな分子が時間的および空間的に複雑な反応をすることにより実現されています。つまり、生命とは分子の反応系であり、その場を提供するのが細胞(cell)です。生物個体が細胞という構造的、機能的単位からできているとの概念は19世紀初めに確立しました。細胞の中にはさらに小さな構造的・機能的単位があり、とくに、(nucleus)は高等生物の細胞には必ず見られる単位です。生物を大きく分けると、核のある真核細胞をもった真核生物(eukaryotes)と、核のない原核細胞をもった原核生物(prokaryotes)になります。図に真核細胞の模式図を示しました。核以外にもいくつかの細胞小器官(organelle)が見られ、細胞は細胞膜で、核は核膜で囲まれ、それぞれの単位の独立性が保たれています。これは、生命を反応系であるとする見方からすると、反応の空間的独立性と階層性をもたらしていることになります。

 細胞にはもうひとつ重要な、時間的に変化する側面があります。それは細胞分裂をして新しい細胞をつくることです。減数分裂でできる生殖細胞(germ cell)は新しい個体を産み出し、体細胞(somatic cell)の有糸分裂は個体の発生・分化と形態形成をもたらします。細胞分裂は、遺伝情報の伝達と発現を可能にする重要なしくみなのです。細胞分裂で次の世代へ伝えられる遺伝情報が核の中に、さらに精密化して染色体(chromosome)の中に蓄えられていることは、19世紀の終わりごろまでに見いだされました。


参考資料

リンク集