染色体顕微切断法による遺伝子マーカーの単離とそのマッピング
大阪大学医学部
三木哲郎
目標
特定の染色体領域について,主として連鎖地図による遺伝子地図を作成することを目標とし,
- 目的とする領域を染色体顕微切断法(microdissection)で切り出し,PCR で遺伝子増幅した産物を pUC 18 に組み込んだライブラリーを作成する
- 多型性をしめす遺伝子マーカーに関して染色体座位を決定したり,連鎖解析を行う
今回は,早期老化症候群の一つであるウェルナー症候群(WRN)の原因遺伝子が存在する
第8染色体短腕 8 p 11.2−p 12付近の領域を対象としています。
成果
目的とする 8 p 11.2−p 12領域から,24個の多型性のあるマイクロサテライト遺伝子
を単離し,
- 8個が第8染色体短腕に座位することを証明
- さらに連鎖解析を行い,遺伝子座位を決定
しました。また,イトコ婚患者を用いたホモ接合性マッピングでも遺伝子座位を確かめました。これらのうちの2個は WRN のある領域に近接した重要な
マーカーと考えられます。平均70−80 kb に一個存在する(CA)リピート遺伝子は,ヒト染色体のほぼ全域にわたって存在するため,連鎖分析に役立つ非常に有用な遺伝子マーカーです。

図の解説
第8染色体 WRN 付近の遺伝子地図
M8,M10,M134,M171,M2 は,今回単離したクローン
参考文献
名倉 潤,他 : Homozygosity mapping (1993) 臨床遺伝学III 診断と治療社 : 150-156
三木哲郎,他 : ウェルナー症候群と家族性アルツハイマー病 (1993) 蛋白質核酸酵素増刊「ゲノム解析研究」38.366-373