日本における研究体制の動向

日本におけるヒト・ゲノムプロジェクト

1985年頃から、すべてのヒト遺伝子の解析を行い、全貌を明かにしようとする動 きが科学者の間に現れ、やがて米国を中心として世界適規模で進められるようになり ました。このような世界の動きに対応して、我が国でもこの計画を推進する動きがあ り、次のような勧告、報告などが行われています。

○1988年6月 航空・電子等技術審議会答申   「ヒト遺伝子解析に関する総合的な研究開発の推進方策について」 ○1989年7月 学術審議会建議   「大学等におけるヒト・ゲノムプログラムの推進について」 ○1989年10月 日本学術会議勧告   「ヒト・ゲノムプロジェクトの推進について」 ○1991年10月 厚生科学会議報告   「厚生省におけるヒトゲノム研究の推進について」

 ヒト・ゲノムプロジェクトについては、文部省と科学技術庁が本格的に取り組んで いますが、ヒトの疾病解明の観点から厚生省、他の生物モデル(イネ)のゲノム解析 の観点から農林水産省が、それぞれの立場でこのプロジェクトに参画しています。  また、このプロジェクトを我が国が一体となって推進するということから、内閣総 理大臣を議長とする科学技術会議の下に[ヒトゲノム解析懇談会」が設けられおり、 これらの研究に関する情報交換、各省庁間の連絡・連携の場として機能させることで 、このヒト・ゲノムプロジェクトの一層の推進が図られています。

文部省におけるヒト・ゲノムプロジェクト

 1988年6月に学術審議会の下に「ヒト遺伝子解析検討小委員会」がおかれまし た。この委員会では、大学等におけるヒト・ゲノムプロジェクトの推進方策が審議・ 検討され、1989年7月に「大学等におけるヒト・ゲノムプログラムの推進につい て」の報告が提出されています。

 また一方、文部省科学研究費補助金により、「ヒト・ゲノムプログラムの推進に関 する研究」(研究代表者:松原謙一大阪大学教授)のグループが1989年から2年 間、ヒト・ゲノム研究に関する準備的研究を行い、その成果として次のような提言が 行われました。

  1. 国際的に展開されているヒト・ゲノムの遺伝子地図、物理的地図の作成に協調 しつつ、同時に我が国独自の研究システムを発展させて主体性のある貢献を図ること。
  2. DNA解析技術の画期的な展開につながる研究とシステムの構築を行うこと。
  3. 数年以内に出現が予想されるゲノム・データベースをはじめとする大量の情報 処理・情報解析に関する研究の確立とシステム化を進めること。
  4. ヒト以外の生物の中から若干のモデルを選び、そのゲノム解析研究を推進し、 ヒトのゲノム解析研究との共役を図ること。
 これらのことを達成するために文部省では新しい研究体制の整備を行い、このプロ ジェクトの推進を図っています。