完全長cDNAライブラリーの作製

東京大学・医科学研究所

菅野純夫、丸山和夫

目標

 mRNAは遺伝子から作られる分子で、これをもとに生命活動の主役であるタンパク質が合成されます。本研究では、mRNAの完全なコピーである完全長cDNAとそのライブラリーの作製を目指しています。完全長cDNAがあればmRNAの全構造を決定することができ、タンパク質の構造を知りその機能を推定することができます。また、タンパク質を大量に作らせたり、改変したタンパク質を作製するときの材料として様々な利用が可能です。

成果

mRNAはACGTの4種類のヌクレオチドが連なってできている直線状の分子で、5’端と呼ばれる端から3’端と呼ばれる端へと遺伝子から作られます。そして、5’端にはキャップと呼ばれる特殊な構造が、3’端にはAヌクレオチドの連なりが結合します。われわれはこの5’端のキャップを、人工合成したオリゴヌクレオチドで置換する方法を開発しました。この方法を用いて5’端に合成オリゴヌクレオチドを付けたmRNAを作ることができます。そして、このようなmRNAを材料にそのコピーを作ることで、従来同定し難かった5’端を簡単に同定できるようになりました(図)。また、このようなmRNAは完全長cDNAを作るのによい材料になると考えられています。

図の解説

新しく開発した方法により5’端に合成オリゴヌクレオチドを付けたmRNAを材料に、タンパク質鎖伸長因子1α遺伝子のmRNAの5’端の塩基配列を決定した。この塩基配列からこの遺伝子のmRNAの5’端は従来考えられていた以上に多様であることがわかった。


参考文献

菅野純夫、丸山和夫:完全長cDNAライブラリーに向けて - キャップ構造のオリゴヌクレ オチドによる置換・(1993)蛋白質核酸酵素増刊「ゲノム解析研究」38、476-481