全長サイズのcDNAクローンを効率よく選択する方法についての検討
日本医科大学老人病研究所
野村信夫
目標
cDNAのもつ全コーディング領域の情報を得るには完全長のcDNAを得る必要があります。しかしながら、ライブラリー中のすべてのクローンを完全長にまでのびたものにするのは困難で、完全長のものが一部に含まれているものの、多くのものは5’末端を欠いた形のものであるというのが現状です。
この研究では、
を目標にしています。
成果
ある遺伝子について、複数の完全長に近いクローンの中から一番長いものを選べば、ほぼ完全な長さを持った目的遺伝子のcDNAが得られると考えられます。そこで、
- cDNAライブラリーを長さの異なる幾つかのグループに分ける
- 目的とする遺伝子の全長サイズのクローンを含むと考えられるグループの中からスクリーニングを行う
方法を考案しました。この方法では、得られたクローンの大半は完全長に近いサイズを持っていると期待されます。また特定のグループのみを対象にすればよいので、スクリーニングを行う回数を少なくすることも出来ます。実際に、10個のクローンについて行ってみましたが、予想通りの結果を得ています。
また、
- スクリーニング用のフィルター作成にロボットの使用が可能かどうかについて検討し、膨大な作業を簡便化できることがわかった
- 全長に近い複数のクローンを得ることによって、全く関係のない二つの遺伝子が人工的に結合したキメラ分子をほぼ確実に排除することができた
このように全長サイズの複数のクローンを得ることは、やや煩雑であるという欠点はありますが、より完全長のクローンが得られることや、モザイクになった分子を除けるという利点があり、cDNA解析において重要なポイントであるということがわかりました。