ヒト蛋白質完全長cDNAバンクの構築

(財)相模中央化学研究所

加藤誠志

目標

 本研究の最終目標は、ヒトの細胞を構成しているすべての蛋白質を、相補DNA(cDNA)の形でとりそろえることです。そのために、

 得られたバンクは、ヒトゲノムの解析に役立つだけでなく、ヒト蛋白質の宝庫として、生命科学研究の進展に寄与します。また、得られた蛋白質は、新しい医薬品への応用が期待できます。

成果

 上記目標を達成するために、新しいcDNAクローニングベクターを開発しました。これを用いて作製したヒトcDNAライブラリーからcDNAをクローン化し、一部あるいは全塩基配列決定による分類を行ない、すでに数百種類の完全長cDNAクローンバンクを構築しました。

 今後、10万種類あると言われているヒト蛋白質をすべてそろえることを目標に、バンクの充実を図る予定です。

図の解説

 プラスミドと呼ばれるベクターを用いて、mRNAからcDNAを合成します。このベクターには、cDNAの塩基配列決定や蛋白質への翻訳が容易に出来るように様々な仕掛けがしてあります。これを大腸菌に入れて培養し、増やした後、大腸菌から取りだし、cDNA部分の塩基配列を決定します。もしcDNA上にコードされた蛋白質が必要な場合には、このcDNAベクターを用いて、試験官の中で、あるいは動物細胞の中で、目的とする蛋白質が合成できます。


参考文献

加藤誠志:ホモ・プロテインcDNAバンク構想―分子博物学から分子生態学へ―・(1993)蛋白質核酸酵素増刊「ゲノム解析研究」38、458-467