酵母人工染色体を用いたヒト染色体地図の作製

今井高志

目標

　ヒトゲノム中に存在するすべての遺伝子を同定してそれらの機能を明らかにし，医学野生物学の分野で役立てるためには，染色体の地図を描くだけでは不十分で，実際に各染色体をカバーする DNA クローンのセットを調製する必要があります。

　この研究で用いている酵母の人工染色体をベクターとするシステムは，数百 kb の DNA をクローニングできることからこのような目的の達成に最も適したクローニングシステ ムと考えられます。

　本研究では，

• 酵母人工染色体クローンの迅速，確実なスクリーニングシステムを構築
• 数百kb からなる酵母人工染色体クローンのシステマティックな制限酵素切断地図の作 製法を確立
• 酵母人工染色体からの遺伝子の同定法を開発

成果

　現在我々は Washington 大において作製したライブラリーと CEPH より供給されたライブラリー（それぞれの一部），合計65,000クローンを保存しています。そこでまずこれらのライブラリーの迅速，確実なスクリーニングシステムを作製するために，種々の方法について検討してきました。その結果，

• 三次元的に配置したプレートより，X, Y, Z 軸に沿って作製した DNA プールを PCR で アッセイしてクローンを同定する系を構築
• PCR産物はこれまでのアクリルアミドゲルによる電気泳動法に換えてドットブロット， 非アイソトープ標識したインナープローブによる検出法を応用。検出感度の増加，非特異的なバンドによる誤差の減少，多くのサンプルの同時アッセイなどが可能となった

今井高志 :クローニングベクター(酵母) (1992) 日本生化学会編新生化学実験講座 2 核酸III : 70-84

今井高志，三輪時子 :YAC ライブラリーのスクリーニング (1993) 蛋白質核酸酵素増刊 「ゲノム解析研究」38 : 591-599

今井高志 : 多発性内分泌腺腫瘍症 1 型，2 型遺伝子座の解析 (1993) 蛋白質核酸酵素増刊 「ゲノム解析研究」38 : 297-304

今井高志 : YAC を用いた巨大 DNA のクローニング (1993) Molecular Medicine 30 : 186-193.