遺伝性精神神経疾患の遺伝子解析

愛媛大学医学部

近藤郁子

目標

 ヒトの遺伝病の中で、知能や運動に障害をもたらす疾患の遺伝子を明らかにし,病気の早期発見や治療に役立てようとしています。取り上げた病気は,

  1. てんかん、手足の不随意運動,知能障害を主症状とする歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA)と呼ばれる病気で,日本人に特に多く見られます。
  2. 家族性の知能障害をもたらす疾患で,以前より男性は女性より知的障害者が多いことが知 られており,原因遺伝子が明らかにされつつあります。
  3. パーキンソン病発症に関係する遺伝子の候補として,薬物代謝や老化に関与する遺伝子 に着目し,病気の人と健康人の間の遺伝子の違いをみています。
成果

  1. DNA プローブと DRPLA 発病との関係を6家族について調べていますが,現在のところ 病気との関連は明らかではありません。今後さらに多くの候補遺伝子との連鎖解析を進める予定です。
  2. 候補遺伝子のひとつ,脆弱X遺伝子の異常を検出しました。家系調査の結果,脆弱X遺 伝子は極めて不安定で,変異をおこし易い遺伝子であることが明らかとなりました。
  3. パーキンソン病は P450 遺伝子の機能欠損者に発病し易いことが示唆されました。 今後の計画として,用いる DNA プローブ候補の少ない13番染色体の DNA プローブを開発しながら,これら3つの疾患を連鎖解析によって原因遺伝子の位置を明らかにし,遺伝子 クローニングを進める予定です。

図の解説

家族性知的障害者の家族における、脆弱X遺伝子の変化と知的発達の程度の関係。血液から得られた DNA を制限酵素 Pst I で切断後電気泳動し,脆弱X遺伝子による DNA の長さと知的レベルとの関係を明らかにした。長い遺伝子を持つ人ほど知的レベルが低かった。


参考文献

近藤郁子:遺伝性精神神経疾患の遺伝子解析・(1993)蛋白質核酸酵素増刊「ヒトゲノム解析研究」38:327ー334.