ヒト14番染色体のゲノム解析
富山医科薬科大学 和漢薬研究所
磯部正治
目標
ヒト14番染色体のゲノム解析を行い,アルツハイマー病や白血病など,この染色体に存在する様々な疾患に関わる原因遺伝子の単離同定を目指し研究を行っています。具体的には,
- ヒト14番染色体に由来するコスミドクローンを単離し,これらのクローンの染色体上の
位置を目印として染色体地図を作る
- 得られた染色体地図上の疾患に関係した染色体領域に存在するコスミドクローンを出発
点とし,疾患に関係ありそうなゲノム領域をクローニングする
- このゲノム領域の中から蛋白翻訳領域などの機能を持つ領域を同定し,その中から疾患
に関係した遺伝子を単離する
このような方法によって今まで全く原因がわからなかった疾患の遺伝子を同定することが可能になってきました。
成果
- 14番染色体に由来する数百個の
コスミドクローンを単離し,染色体地図を作製しつつある
染色体から得られたゲノム領域の中で機能を持つ遺伝子をコードしている部分は,たかだか数%に過ぎません。これらの領域は生物にとって重要な意味を持つのでヒトやウシ,時
には大腸菌においても保存されています。
- 図に示したように,このような領域をゲノムDNAの中から系統的に単離する方法を開発しました
その結果ゲノムDNA中の機能領域の解析を迅速に行うことができるようになりました。
現在この方法を応用して白血病の原因遺伝子の単離を試みています。

図の解説
Zoo PCR 法 : クローン化されたヒトゲノムDNAの中から,マウスでも保存されている領域を単離する方法。マウスのゲノムDNAをビーズに固定し,PCR法で増幅したヒトゲノムクローンの断片をハイブリダイズさせる。種を越えて保存される領域は,マウスDNAと結合す
るのでこの結合したヒトDNA断片をビーズから単離増幅後,回収する。
参考文献
磯部正治 : T細胞受容体遺伝子座と染色体転座 (1993) 蛋白質核酸酵素増刊 「ゲノム解
析研究」38 : 383-391