レポート問題集

2000

  1. 線虫(Caenorhabditis elegans)ではアポトーシス(細胞死)に関与する遺伝子として、ced-3 や ced-9 などが知られている。これらのアミノ酸配列をデータベースから取得し、他の動物でのオーソログ遺伝子や関連遺伝子を探索して、アポトーシスパスウェイの進化を考察せよ。
  2. フェニルケトン尿症(phenylketonuria)と呼ばれるアミノ酸代謝異常に関する遺伝病にはいくつかのタイプがある(例えば、OMIM の morbid map 参照)。それぞれは異なる遺伝子が関与しており、酵素番号としては、1.14.16.1、4.6.1.10、1.6.99.7 などで、KEGG では2つの代謝マップに出現している。これらの酵素が触媒する化学反応を調べることにより、異なる遺伝子と異なるタイプのフェニルケトン尿症の関連を議論せよ。
  3. これまで23種類の真正細菌(bacteria)と、6種類の古細菌(archaea)の全ゲノム塩基配列がデータベースに登録されている。真核生物(eukaryotes)は真正細菌よりも古細菌に似ていると言われるが、RNA ポリメラーゼ、その他の酵素複合体を構成する遺伝子を調べ、その証拠を検証せよ。

1999

  1. 常染色体劣性遺伝の若年性パーキンソン病(AR-JP, Autosomal Recessive Juvenile Parkinsonism)に関連した遺伝子として parkin が昨年我が国の研究者により見いだされ、Nature 誌に報告された。この遺伝子の機能は未知であるが、配列解析により何か手がかりが得られるかもしれない。データベースから parkin のアミノ酸配列を取得し、ホモロジー検索、モチーフ検索、その他の解析を行って、parkin の機能を議論せよ。

  2. これまでに全ゲノム塩基配列が決定された生物種の中で、Mycoplasma genitalium と Mycoplasma pneumoniae、および Chlamydia trachomatis と Chlamydia pneumoniae はそれぞれ比較的近縁のバクテリアである。それぞれのペアにおいて遺伝子の並びを比較すると非常に似ているにもかかわらず、興味深い相違点も存在する。これを進化的な観点から解析し考察せよ。

1998

  1. 最近の Science 誌に報告された論文によると、家族性の若年性ポリープ(juvenile polyposis)には SMAD4(または DPC4)遺伝子の変異が見られたという。この遺伝子のアミノ酸配列をデータベースから取得し、ホモロジー検索で他生物種との比較を行い、遺伝子の機能について議論せよ。また、他の大腸がん関連遺伝子も探して比較、考察せよ。

  2. 代謝経路と酵素の立体構造(フォールド)分類との関連を見ると、例えば β/α バレル(TIM バレル)タンパク質がトリプトファン合成経路の最後のステップで繰り返し使われていたり、TIM バレルと Rossman Fold が解糖系ではペアで存在するなどの傾向が知られている。これらの例を確かめ、また他にも何か規則性が見いだせないか調べ、結果の生物学的な考察をせよ。

  3. Pyrococcus horikoshii OT3 の全アミノ酸配列データ(~mkanehis/tmp/pyro.faa)から ABC transporter と Two-component system の遺伝子を予測せよ。

1997

  1. アルツハイマー病(Alzheimer disease)に関与した遺伝子は、これまで4つの染色体で見出されている。これらの遺伝子に関する情報をデータベースから検索し、その内容を要約せよ。また遺伝子がコードするタンパク質のホモロジー解析や構造・機能予測を行い、その結果を議論せよ。

  2. 大腸菌(Escherichia coli)の酵素遺伝子が構成する代謝経路を調べ、連続した酵素が類似の配列グループ(スーパーファミリー)に属している例、類似の立体構造グループ(フォールド)に属している例、同一のオペロンに属している例などをあげ、その生物的意味を議論せよ。

  3. タンパク質の立体構造の特徴を表現する方法の1つとして、Ca 原子間の距離マップ(「ゲノム情報への招待」図3.11)がある。PDB または PDBSTR から座標データを取得して、距離マップ表示を行うプログラムを作成せよ。ただし、簡単のため等高線のプロットではなく、距離に応じて数字や記号を並べるだけでもよい。

1996

  1. 最近、ウェルナー症候群(Werner syndrome)に関与した遺伝子の塩基配列が決定された。この遺伝子に関する情報をできるだけ多くのデータベースから検索し、その内容を要約せよ。また遺伝子がコードするタンパク質とホモロジーをもつタンパク質を検索し、その結果を議論せよ。

  2. 代謝系の主要なパスウェイである解糖(glycolysis)では、ほとんどのタンパク質の立体構造が知られている。これらの立体構造はどんなフォールド(折れ畳み方のパターン)をもつか調べ、その進化的意味やパスウェイとの関連を議論せよ。その後で、同様の解析を行った文献を探し、結果を比較せよ。

  3. タンパク質立体構造データベースより Bovine pancreatic trypsin inhibitor (BPTI) のエントリー 5PTI を取得し、Ca 原子間の距離マップ(教科書図3.11)を作成せよ。簡単のため等高線のプロットではなく、距離に応じて数字や記号を並べるだけでよい。また、立体構造の特徴が距離マップにどのように反映されているか議論せよ。

1995

  1. アミノアシル tRNA 合成酵素は10種類のアミノ酸ずつ2つのクラスに分かれることが知られている。アミノ酸配列のホモロジー、ATP 結合モチーフ、さらに既知の立体構造の情報から、2つのクラスにどのような違いがあるのか調べよ。

  2. 最近、乳癌(breast cancer)に関与した遺伝子の塩基配列が Skolnick らによって決定された。この遺伝子に関する情報をできるだけ多くのデータベースから検索し、その内容を要約せよ。また遺伝子がコードするタンパク質とホモロジーをもつタンパク質を検索し、その結果を議論せよ。

  3. Yeast の Phe-tRNA の配列をデータベースより取得し、可能なベースペアの位置を示したドットマトリックスを作成せよ。その際、講義ノート (4) にあるように、ベースペアが最低限何個か連続した場合のみドットを表示するようにしてみよう。

1994

  1. 細胞接着分子カドヘリンの作用を制御するカテニン(a-catenin, b-catenin)は、どのようなタンパク質との間に配列のホモロジーがあるかを調べよ。また b-catenin と癌抑制遺伝子 APC との関連を報告した論文も参考にして、ホモロジー解析の結果の生物的な意味を議論せよ。

  2. 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)という遺伝病には、あるタンパク質が関与している。これはどのようなタンパク質で、どのようなアミノ酸配列の変化と病気の関連が見いだされているか。また立体構造との関連はあるか。さらにこのタンパク質と配列のホモロジーをもつタンパク質を検索し議論せよ。

  3. Yeast の Phe-tRNA の配列をデータベースより取得し、可能なベースペアの位置を示したドットマトリックスを作成せよ。その際、講義ノート (6) にあるように、ベースペアが最低限何個か連続した場合のみドットを表示するようにしてみよう。

  4. タンパク質立体構造データベース PDBSTR より Bovine pancreatic trypsin inhibitor (BPTI) のエントリー 5PTI を取得し、講義ノート(1) にあるような Ca 原子間の距離マップを作成せよ。

1993

  1. ヒトの色感覚(human color vision)をつかさどるレセプターのアミノ酸配列を決定した J. Nathans の論文はいつどの雑誌に発表されているか。そこに報告されている赤色光のレセプターのアミノ酸配列でデータベースのホモロジー検索を行うと、どのような類似タンパク質が見つかるか。

  2. 嚢胞性線維症(cystic fibrosis)という遺伝病には、ある膜タンパク質が関与している。これがどのようなタンパク質で、どのようなアミノ酸配列の変化と病気の関連が見いだされているか、原著論文をデータベースで検索し、必要ならそれを図書室で探して調べよ。

  3. タンパク質立体構造データベース PDB またはそれを再編成したデータベース PDBSTR より Bovine pancreatic trypsin inhibitor (BPTI) のエントリー 5PTI を取得し、講義ノート(2) にあるような Ca 原子間の距離マップ、または立体構造のグラフィックス図(例えば、 Ca 座標のスケルトン表示)を作成せよ。