文献データベース

 自然科学の分野では膨大な量の雑誌、単行本、学会発表などにより、研究成果が公表されている。これらの抄録(アブストラクト)を収集した二次刊行物として、生物学分野では1926年に設立された米国フィラデルフィアの非営利組織 BIOSIS による Biological Abstracts が、化学分野では米国化学会により1907年に設立された CAS (Chemical Abstracts Service) による Chemical Abstracts がよく知られている。BIOSIS も CAS も毎年5〜60万件の文献を処理しているという。また、CAS には文献以外に化合物のファクトデータベースもあり、130万件の物質が登録されている。これらはいずれもオンライン化されているが、利用は有料である。

 医学・生物学の分野では米国 NLM (National Library of Medicine) が作成する Index Medicus もあり、これは1971年より MEDLINE としてオンラインサービスが行われている。MEDLINE には約 4,000 の医学・生物学関係の雑誌から 750万件にのぼるアブストラクトが蓄積されている。MEDLINE ではさらに MeSH (Medical Subject Headings) とよぶ標準化された語彙による文献の内容の分類がされている。また、最近は DNA 塩基配列のファクトデータベース GenBank も MEDLINE と連携して作成されるようになった。

 これらの文献データベースはいずれも版権と利用の制限があり、以下に述べる塩基配列、アミノ酸配列、立体構造に関するファクトデータベースとはかなり趣を異にする。それは後者が研究をサポートする公共的なレポジトリーとしての性格が強く、原著者がデータを直接データベースへ提供することにより維持されているからである。ただし、MEDLINE の一部については塩基配列データベース GenBank との関係から、かなり自由に利用することができるようになっている。