ヒトゲノム解析センター
ヒトゲノム解析センターは、文部省新プログラム「ヒト・ゲノム解析研究」の一環として、平成3年4月に東京大学医科学研究所に設置されました。当センターは、広範な研究を行う日本のヒトゲノム研究の中心であり、国内および国際協力研究を推進する先導的役割をも担っています。また、医学・生物学の研究者へのデータならびに研究資材供給のための中核施設でもあり、現在、5つの分野で構成されています。
[ゲノムデータベース分野]
ゲノムプロジェクトでは、多種多様で大量の情報が日々産出されています。これらの情報を処理するためのデータベース技術を研究開発するのがこの分野です。こうした技術を用いて、高度で統合化されたゲノムデータベースを国際的な協調のもとに構築し、国内外の研究者に提供することを目的としています。
- ゲノムデータベースの統合化と高度化に関する研究
- 大量cDNAデータ自動解析システムの開発
- 微生物ゲノムの機能解析のための統合データベース環境の構築
- ヒト染色体シークエンスマップデータベースの構築
- 生物学医学文献からの知識自動抽出システムの開発
- 疾患遺伝子知識ベースの構築
- 遺伝子領域発見システム開発
- ゲノムベータベースからの相関ルール抽出手法に関する研究
[ゲノム構造解析分野]
ゲノム解析研究とともにゲノムプロジェクト推進のために必要とされている技術開発、および有用研究資材の供給を行っています。主な研究活動としては、ダウン症やアルツハイマー病などの神経系の疾患や日周リズムなどの行動に関る遺伝子を明らかにし、その分子構造の解明を目指すこと等があげられます。
- ゲノムマッピングおよび大規模シークエンシングによる21番染色体の構造解析、および同染色体上にマップされるダウン症関連遺伝子群の解析
- アルツハイマー病の発症機構の解析
- 遺伝子発現プロフィルの高速スキャニング法の開発と応用
- ヒトにおけるリズム発生機構の解析
[DNA情報解析分野]
ゲノム情報解析の課題はデータベース化の問題とデータの意味解釈の問題の2つに大別できます。この分野ではおもに後者の課題に取り組み、核酸配列およびタンパク質等に関する生物情報を対象とした、知識の発見、情報の解釈、知識ベース化のための知識情報処理システムを研究・開発しています。
- 知識発見システムの研究・開発
- タンパク質立体構造の比較と推定
- ゲノム情報解析のための効率のよりアルゴリズムの研究
[ゲノムシークエンス解析分野]
ヒトゲノム解析研究は医学・生物学研究の将来にとって欠くことのできない基盤的研究であり、その成果は、疾病の診断、予防、治療法の開発などに広く応用され人間社会に役立っていきます。この分野での目的は、世界的な協力体制のもとに進められているゲノム解析研究に貢献するとともに、ゲノム解析研究を応用してグローバルなレベルでの医学的な研究成果をあげることです。特に、疾患遺伝子の特定を行い、病気の画期的な治療法や有効な予防法につながる基盤研究に力を注いでいます。
- 薬剤や種々の刺激などの特定の生体反応あるいは疾患に関連する遺伝子を単離する
- ゲノム中のVNTR配列の遺伝子発現量調節への関わりや病気との関係を解明する
- 転移しやすいがん細胞に共通して量的・質的に変化の認められる遺伝子群を単離する
- 疾患関連遺伝子の存在する領域を中心に、年間1-1.5百万塩基配列の決定を行う
- 遺伝性疾患の解析のためのマイクロサテライトマーカー500種類の日本人における頻度情報を解析する
[シークエンス技術開発分野]
ゲノム解析研究は世界規模で研究が進められていることから、その構造解析は高精度化をたどり、現在ではシークエンスレベルでの解析を中心とする、より優れた解析技術の開発が求められています。この分野は、ゲノム解析の手法を用いて疾患遺伝子やヒトの基本的機能に関与する遺伝しを特定する研究と連携して、ゲノム解析に必要な技術開発を進め医学・生物学に貢献することを目指しています。
- 日本に多い福山型筋ジストロフィーをモデルとして、疾患遺伝子領域の塩基配列の決定を行い、有用なシークエンス技術を開発する
- 本疾患原因遺伝子を単離し、機能解析を行う
- 脳の基本的機能に関与する遺伝子を特定し、機能解析を行う
- FISH法、CGH法などを含むゲノム解析手法の開発・改良を行う