ヒトY染色体のマッピング

東京大学大学院 医学系研究科

中込弥男

目標

 ヒトの染色体は2本ずつ対になっていますが,唯一の例外が性染色体で男性でXY,女性 でXXという組み合せとなっています。元来は1対の常染色体が,進化の過程でそれぞれ特 殊化してXとYになったというのが定説です。とくにYは進化の速度が速く,ヒトとチンパ ンジーを比べても形態的には殆ど似ていないくらいです。あらゆる染色体のうちで最も急速に進化しているY染色体。その全容を明らかにすることで,性分化の問題に止まらずゲ ノムの進化,生物の進化と種の分化の問題の解明につながる成果が得られるものと考えられます。

 この研究の目的は,

ことにあります。

成果

ヒトの全ゲノムを挿入したYACライブラリー(癌研蒐集分)からY染色体DNAを含むYACクローンを分離し,

今後はこれまでに得られたYACクローンの整列化と含まれる遺伝子の単離を進める予定で す。

図の解説

Y染色体の欠失地図作成に使うプローブとよぶDNA断片で,約50種を使用している。


参考文献

中込弥男,他 : Y染色体のゲノム解析 (1993) 蛋白質核酸酵素,38 : 278-283

中込弥男,他 : PCRによる性の決定 (1992) 蛋白質核酸酵素,37 : 2191-2195