ヒト21番染色体物理地図の作成

国立がんセンター研究所

大木 操

目標

 ヒト21番染色体は、ヒトでは一番短い染色体で,ダウン症,アルツハイマー病,筋委縮性側索硬化症,ある種の急性骨髄性白血病等の発症とからんだ遺伝子をもつことが知られています。この研究では,

という基本的な問題を目標としています。これらの問題を解決するため,まず我々はNot I という制限酵素を用い,物理地図の作製からスタートしました。

成果

 21番染色体長腕は約4千万塩基対からなると考えられています。Not I という制限酵素を用いて一度バラバラにしたDNAの断片を,もとの通り再構成する方法を開発し,

 これは染色体レベルでの物理地図としては世界で最初のものです。この地図を用いると染色体の転座や部分欠失と言った染色体構造の異常の検出が非常に簡単で,ある種の急性骨髄性白血病発症の原因となっている染色体異常の同定にも大きく役立ちました。

図の解説

 物理地図上の横棒は制限酵素 Not I での切断部位を示す。切断点左側の記号は,それぞれの部位に相当する Not I リンキングクローン名を示し,右側の数値は各部位間の距離を示す。右側は既知の遺伝子やDNAマーカーの座位を示す。


参考文献

Ichikawa, H., et al.: Long-distance restriction mapping of the proximal long arm of human chromosome 21 with Not I linking clones (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 23-27.

Chumakov, I., et al.: Continuum of overlapping clones spanning the entire human chromosome 21q (1992) Nature 359: 380-387.