ポップフィールド型ニューラルネットワーク

 第2のアプローチは概念的には単純で、配列の相補部分を調べて適当な長さ以上のステムの候補をすべて列挙し、矛盾(重なり)のない組合せの中からエネルギー関数が最適なものを探す。ここで注意しなければならないのは、あるステムの端を少しほどくと矛盾がなくなる場合があるので、候補としては最長のステムだけでなく、それに含まれる部分的な長さのステムもすべて候補として準備しておかなければならない。いずれにせよ一般に膨大な組合せの数となり、最適化問題の様々なテクニックを適用する必要がある。ここではホップフィールド型ニューラルネットを適用してみよう。  ニューラルネット(neural network)の研究は脳の神経回路網の数学的モデルとして始まった。とくに後述する階層型ニューラルネットはユニット(ニューロン)が入力層から出力層まで階層的につながったネットワークで、学習能力をもつパターン認識機械である。ここではユニットが相互に結合されたホップフィールド型ニューラルネットを考える。Hopfield は物理のスピングラス系とのアナロジーから、対称相互結合型ニューラルネットが二次形式の評価関数をもつ最適化問題の解法に利用できることを示した。それは、例えば二次形式で表現されたエネルギー関数
     
を最小化するのに、ニューラルネットの更新規則
     
     
を適用して、安定状態を探索するのである。この探索は確率的に行われ、具体的にはユニットをランダムに選択して更新規則を適用していく。そこで収束を速めるため、シミュレーテッドアニーリングと同様に温度パラメタ T を高温から次第に下げていく技法が使われる。  RNA二次構造予測の問題を解くには、最も簡単なエネルギー関数の形として
     
と表現してみる。ここではループのエネルギーは考慮されていないが、ei はステムのエネルギー値、vi は 1 または 0 の値をとる変数で、i 番目のステム候補が選ばれるかどうかを示す変数である。ciji番目とj番目のステム候補が矛盾するかどうかにより 1 または 0 で与えられている。l は普通の意味でのエネルギーの総和である第1項と、矛盾をペナルティとした第2項のバランスをとるパラメタである。さらに、このエネルギー関数を改良してヘアピンループ構造や、シュードノット(pseudo knot)構造を簡単に取り入れることができる。